夢の中 親しい女性がいる そうだ、生活保護申請の前に清算するお金、彼女に借りれないか あれ、この人は母か あのさ、と言いかけ 母は死んでいたことを思い出す めずらしく夢の中で自覚する 「最近、坂道や、バス停のあたりで襲われるの」と彼女は言う 一緒にそのあたりを見に行く 「大丈夫、何かあったら連絡して こうやって夢の中で会えるのだし」と伝え、そうねと朗らかな母 夢の中の架空の家の、一面の窓ガラスから木漏れ日差し込む父の机を借りて、あの面倒な作業ができるかもしれない、この気持ちのよい場所なら と思う 目が覚める 最近は母は夢の中にカジュアルに登場する この状況なら成仏しているはずもない が、あの性分なら本人まんざらでもなかろう 『虎に翼』最終話のトラちゃんのように
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霧の中でも輪郭が曖昧になることはない ただ見えたり見えなかったりするだけだ