何かをつくるとき 自分が消えたようになるときがある
何か大きなちからに動かされているような感覚
その「大きな何か」を誰かに伝えるための、
自分はただの通過物になったような状態
この宇宙のすべてのもの、存在に
感謝のような、敬うような
そのとき感じる 強い強い、眩しさ
(2009年7月23日の手記より) 
 
その事について考え続けていたわたしは
自分が消えたような状態は「窓」だと導き出し
同じように生きている人へ旗を振るような気持ちで、
「窓が主人公の絵本」に取り組んだ
 
制作が長く難航していたあるとき、
副産物のように『すきとおりすけのすけ』が訪れた
窓と同じように透明な、「いるのにいない」すけのすけ
 
描いてゆくにつれわたしは、すけのすけの究極の孤独を知った
誰にも存在を認識される事無く生きてきた彼はきっと、
寂しさすら知らなかったのかもしれない 
 
すけのすけの「自分でもわからなかった自分の姿」は
幾多のトラブルや他者との関わりによって露になってゆく
ひとは 誰もがそうやって己を知ってゆくのではないだろうか
 
 
そしてときは訪れる
誰かが自分をみつける
言葉を交わす
ぬくもりを知る
 
究極の孤独を生きてきたすけのすけにとって
どんなにか眩しく衝撃的な瞬間だったであろう
 
何も言葉にならないときにあふれる涙のように 雨は降る
 
元の透明な姿にもどったすけのすけは
そのつかのまの鮮やかな記憶をいだいて生きてゆく
もう彼はきっと 寂しさも知ってしまった
それは眩しさと共に在ることも
 
いつかあなたが孤独の中に居るとき、
すけのすけはきっと 側に居る
何もしない、ただ居るだけ
あなたは気づかない
 
でもあなたのこころは何故かほんのすこしあたたかになる
それだけでうれしい
すけのすけも
わたしも