はしる電車の窓から景色を見ていた
とおくをとんでゆく鳥の群れ
送電線をくぐると線幅が深呼吸する
こちらにいっしょうけんめい手をふるこども
通り過ぎる瞬間、屋根も車も何もかもがキラリと光る
淡い夕焼けに浮かび上がる富士山のシルエット
そんな空を映し、酔うような川
きらきらと流れる涙のように、橋を渡る車のライト
それらに夢中で見入ってるうちに、日は暮れ
窓ガラスにはいつのまにか透けた自分が映っていた

そんなだったんだ と、いま思う
この輪ゴムの絵本をつくる作業は

ひっしでうかがった輪ゴムの声  そうして
きこえてきたのは物理的なことばかりだったのに
そこに自分の姿が見えた

ああ わたしも
ずっと、ひとつのことだけを思ってきたみたい
あるがままの姿でいたいと

でも ずっとあのままだったらわからなかった
違和感こそがわたしをどこかへつれていってくれる
だからわたしはいま、ここにいる
そして、だれのためでもなく思ったとき
わたしも、うたうことができるのかな
とおくへとんでゆけるのかな

輪ゴムと向きあっているとき
何度かまぶしい気持ちになる瞬間があった
そのときはなにがなんだかわからなかった けど
あれはきっと、輪ゴムの声にうなずいていたんだ
なにひとつ言葉じゃない会話の中で

そのまぶしさは、言葉じゃないものの中に入ってる
いつか その声があなたにとどいて
うなずいてくれたらいい

そしてわたしはまた向きあう
うなずくために

そんな何かとの出会いを待っている