真夏の暑さに干からびそうになっていたベランダのトマト達は、暑さが引いた頃にまた、青々とした葉を茂らせた ただその瑞々しい姿を眺めるだけでこちらも瑞々しい気持ちになり、せっせと水をあげた すると枯れきったと思っていた花がパーっと咲き始めた どの鉢にも
もう気温も低いし風も強いし実はつけないだろう、けれどその黄色い花のいとおしさを愛で、またせっせと水をあげ続け、これが最後かなと思いながら「この季節の恵みをありがとう」と追肥をし、またせっせと水をあげ続けた
植物も動物もきっと同じ 眠くても体調が悪くても自分はさておきガバと起き、暑くても大雨強風でも水をあげられた 声なき植物なのに何故か彼らの鉢がカラカラに乾くとバチッと目が覚める 声なき声は日に日に間違えなく届くようになり、水や追肥や摘心を重ねるごとに意思疎通のようなものが生まれた
特に摘心は数学や物理的な仕組みをふまえて行うのだが、「その先を信じる」というのが一番大切のように感じた その先を信じてバッサリ切ると、信じたそれ以上の瑞々しさで葉を広げた 「こう在りたい」という植物の意思を尊重すると応えてくれる 胸の中に生まれるあたたかな気持ちに毎日感謝した
そして季節遅れの葉や花の鑑賞だけでもありがとうと豊かな気持ちで居られた日々にふと、小さく実をつけている鉢を見つけた うっかり遅刻して、宝石のように艶やかに輝く実 それを見られただけでも予想外の歓びをいただいた
それから気づくと他のどの鉢にも実がついてきた いくつもいくつも どんどん大きくなる もしかして寒くて途中でダメになるかもしれないけれど追肥をしよう、次に晴れた日には そんな今もまた新しく花が咲いている
農家の知り合いでも今年の夏は厳しかったと言っていた そんな季節を乗り越え共に過ごしてくれた植物たち、ありがとう