「創刊60周年こどものともの世界」へ寄せて

「めぐり」

大学生の頃、毎週テレビで天野さんの姿やお話を拝見し「広告批評」や天野さんのご著書を読みあさっていた そのとき、幼い頃に親しんでいた「ぬくぬく」が天野さんのご著書と知った わたしは美大生で、何かを創らずには居られぬ焦燥感の中ひたすら創っていた すでにかなりの作品数になり何冊ものファイルにあふれるほどだった 天野さんの文章を読むほどお話を聞くほど「天野さんはわたしを『おもしろい』と思うにちがいない」と思った そして広告批評の運営する「広告学校」へ通い課題や成績を評価され「広告批評」の挿絵や表紙を担当することになった その頃、ずっと家にあった「ぬくぬく」を持参し天野さんに名前を書いていただいた 何かくすぐったいような気持ちがした 天野さんもそのようだった その後何年か経って、天野さんと一緒に「絵くんとことばくん」という絵本をつくった 時折寄せられる感想を読むと「いつかわたしもこの本を読んだ人と仕事をするときがあるのかもしれない、天野さんとわたしのように」と思ったりした あるとき「ぬくぬく」を読み返していたら「これは天野さんだ」と思った 人々となじめない“さむがりのようかい” そこへ妙な女の子が現れどこまでもついてくる ぬくぬくは自分の“やまいも”を女の子にわけてやる 女の子が寝てしまい自分のからだに巻き付けた“わら”を女の子にかけてやる わたしも天野さんにそんなふうに妙なやつと思われあたたかにしていただいた そう思うと泣けてきた そして女の子を先頭に「ぬくぬく、ぬくぬく」というこども達の行列に、ぬくぬくは“さむくない”“からだじゅうがぬくぬくぬくもって”ニコニコと行列に加わる わたしは天野さんにそんな気持ちをお届けできたのだろうか そして去年展覧会をした店のスタッフが小学生のころ「絵くんとことばくん」を読んでいたと教えてくれた ああ、ついにその瞬間は来た 天野さんに知らせたい、と思った